敵 感想 (ネタバレあり)

感想 (ネタバレあり)
吉田大八監督筒井康隆原作っていう前情報のみでみにいってきた
ボヤボヤしてるうちに公開からだいぶ時が経ってしまった
いわゆる信用できない語り手モノで、と現をいったりきたりするので、割と最初の夢オチらへんから「コレ集中力もつかな…」といささか心配にはなったのだが、なんだかんだで最後まで興味が持続できた
からはじまり、と経て、を迎えられなかった老人の話なのだが、どこまでが夢でどこまでが現実なのかという解釈の仕方によって如何様にもとれる変な映画だなあ、と
私は基本的にはより悪い方に認知するので、実はもうほぼかなり最初から夢だったというオチという解釈が気に入っているのだが、妻と話してて「いや、それは救いかなさすぎるやろ!!」と
フランス文学の教鞭をふるっていたらしい主人公?の儀助が淡々と日々を(しかし非常に丁寧な)送っているのだが、ファムファタル的に元教え子だったらしい女と、バーで知り合った自称仏文を学んでいるという女と、そして亡き妻という3人がジジイの金玉を掻き乱してくる、という
特に2人めが怖くて、オレももし妻に先立たれて「やっぱジョージ・ミラーは最高ですよね!!」みたいな女があんな感じで現れたらくらっときそうだなっていう怖さがあった
私の解釈だと、元教え子が通ってきてるのも妄想だとおもったのだが、どうなんだろう....?
もうかなり夢確定してる状態で、亡き妻が元教え子に対して「まあふしだら!」と罵るシーンで、まさか後妻として元教え子を抱え込んだけど、早々に大学を追い出された(本人的には自ら辞めたっぽい認識だったようだけど)から離婚されたというのを飲み込みきれずに今も元教え子が通ってきているという妄想というか、夢というか、で糊口を凌いでいるわけではあるまいな!?と....
松尾貴史の役回りもかなり怪しくて、おそらくバー夜間飛行を紹介してたっぽいし、喫茶店でそれとなく残高がいくらぐらいあるかは分かるような話をしていたので、目星をつける役として立ち回って、オーナーの姪?と引き合わせたらあとはハニトラにかかるのをじっくりと待って....みたいな
入院しちゃって〜という話以降登場しないのだが、バーがトンズラこいてるし、全員グルでケイパーが終わったから逃げたってコトなのでは.....?と
ところで入院といえば、上から目線で「病院に行くなんてなあ病気になりにいくようなもんだ」と御高説を垂れるのだが、ノリでキムチ食っちまって血便が出たらそそくさと病院に駆け込む姿は滑稽としか言いようがなく、虚勢を張るのはヤメよう.....と己を戒めた
老人とはいえ、クソみたいなフィッシングのメールには引っかからない程度のリテラシはありそうだったのだが(まあその、敵を知らせる胡散臭いメールの URL をクリックしてしまうという愚行はしていたが)、その知能をもってしてもハニトラにはかかっちまうんだな、というのがかなり戒めというか、いやまあ、自分がそんなハニーを用意してトラップにかけるほどの価値があると自認しているわけではないが、それにしても金玉に負けるとこういう事態になっちまうんだぞ、という訓話としてまあ刺さった
フードシーンがなかなか撮影が上手くて、モノクロなのにめちゃくちゃ腹減るぐらい出てくるメシが旨そうで、帰りに敵フードとして普段全く食べない冷麺を食べてしまった
また、訓話的なニュアンスでいうと、なんていうかこう、自分の最期はしみったれた感じで終わるわけではなく、銃撃されて死ぬみたいな華々しい(...か?)終わりを迎えたいという意識は、心の奥底のどこかにある感じの感情なのであるが、敢えてなのか、非常にチープな特撮として終盤に敵なるものに家全体が襲われるという展開になるわけだが、主人公が「絶対それは妄想やん」というオチのまま時が流れて、遺言が読まれているのがとても物悲しかった
一体何度己を律したんだろうかというぐらいの寓話的な話だとおもったのだが、エンドロールの最後に製作委員会として TEKINOMIKATA というクレジットが出て、敵の敵は味方だろうけど、敵の味方は敵じゃん!! とツッコミをいれてしまった.....が、敵の味方ってのは「敵」を何と捉えるかという話とセットなのかなとおもって、例えば分かりやすく「老い」こそが敵なのだとしたら、必ず老いるものなのだから、気高く散ろうなどと考えずにできなくなっていくことを楽しんでいこう!! みたいな発想もできるのかなーと
「敵」は「金玉」なのだとしたら、いやはや人間そういうとこあるよネ〜〜ピンク映画みてシコって寝よ、みたいなね
素直に原作が気になったので原作も買った